カポエイラの楽器にパンデイロがありますが、見た目がタンバリンによく似ているため、知らない人はよく間違え易いものです。そこでタンバリンとパンデイロについてさまざまな点から比較してまとめてみたいと思います。
タンバリンとパンデイロの違いについて、以下の4つの観点で解説します。
- 構造
- 歴史
- 発祥
- 音楽性
- 使われる分野
1.構造
タンバリンとパンデイロは、見た目が似ている打楽器ですが、構造的な違いがあります。その違いは以下のようになります。
- ジングルの向き: パンデイロのジングルはお皿を伏せたように重ねられており、タンバリンのジングルはお皿を背中合わせに重ねられています 。この違いにより、パンデイロのジングル音はタイトで短く、タンバリンのジングル音は広がりがあり長く鳴ります。
- 打面の仕様: パンデイロの打面は皮やプラスチックなどの素材でできており、金具で枠に固定されています。この金具を締めたり緩めたりすることでチューニングが可能です。タンバリンの打面は革やプラスチックなどでできており、接着剤や鋲で枠に固定されています。チューニングはできません。
- 奏法と音色: パンデイロはブラジルの音楽に用いられる楽器で、サンバやショーロなどのリズムを演奏します。手や指で打面を叩いたり、手首をひねったりしてジングルを鳴らしたりします。打面から出る低音も重要な要素です。タンバリンはクラシックやポップスなどの音楽に用いられる楽器で、打面を手や膝などで叩いたり、振ったりしてジングルを鳴らしたりします。打面から出る音はあまり重視されません。
2.歴史
タンバリンとパンデイロはともにフレームドラムと呼ばれる打楽器の一種です。フレームドラムは世界中に古くから存在する楽器で、円形の枠に皮や布などを張ったものです。ジングルという金属製の円盤が枠に付いているものもあります。タンバリンとパンデイロはこのジングル付きのフレームドラムの一種ですが、それぞれ異なる地域で発展してきました。
タンバリンはヨーロッパや中東で古くから使われてきた楽器です。その起源は定かではありませんが、古代エジプトやギリシャ、ローマなどで見られた楽器が祖先とされます。中世からルネサンスにかけては教会音楽や民俗音楽に用いられました。18世紀以降はクラシック音楽や吹奏楽などにも取り入れられました。現在では様々なジャンルの音楽で使われています。
パンデイロはブラジルで生まれた楽器です。その起源はポルトガルに遡ります。ポルトガルでは16世紀頃から「pandeiro」というジングル付きのフレームドラムが使われていました。この「pandeiro」はアフリカやアラブなどから伝わった楽器が元になっています。「pandeiro」はポルトガル語でジングル付きのフレームドラム全般を指す言葉ですが、日本ではブラジル式の「pandeiro」を「パンデイロ」と呼びます。ブラジルでは17世紀頃からアフリカ系奴隷や先住民との交流によって「pandeiro」が変化し、「パンデイロ」として独自の音楽性を持つようになりました。現在ではサンバやショーロ、ボサノヴァなどのブラジル音楽に欠かせない楽器です。
3.発祥
タンバリンとパンデイロはそれぞれ異なる地域で発展してきたことが分かりますが、その発祥地についても詳しく見てみましょう。
タンバリンはヨーロッパや中東で古くから使われてきた楽器ですが、その発祥地は一つではありません。タンバリンは様々な地域で独自に発明されたり、他の地域から伝わったりした可能性があります。例えば、古代エジプトでは「sistrum」という金属製の枠に金属製の棒を通した鈴状の楽器が使われていました。これはタンバリンの原型と考えられます。また、古代ギリシャでは「tympanon」という皮を張った円形の枠に鈴を付けた楽器が使われていました。これもタンバリンに似た楽器です。古代ローマでは「tympanum」という同様の楽器が使われていました。これらの楽器は中世ヨーロッパに伝わり、教会音楽や民俗音楽に用いられるようになりました。また、中東では「daf」というジングル付きのフレームドラムが使われていました。これはイスラム教の神秘主義者や吟遊詩人によって広められました。これらの楽器はヨーロッパと中東で交流することで互いに影響を与え合い、現代のタンバリンにつながっていきました。
パンデイロはブラジルで生まれた楽器ですが、その発祥地はポルトガルです。ポルトガルでは16世紀頃から「pandeiro」というジングル付きのフレームドラムが使われていました。この「pandeiro」はアフリカやアラブなどから伝わった楽器が元になっています。ポルトガルは大航海時代に様々な地域と交流し、その中で音楽や楽器も取り入れていきました。その結果、「pandeiro」は様々な形や大きさや音色を持つようになりました。「pandeiro」はポルトガルからブラジルにも持ち込まれました。ブラジルでは17世紀頃からアフリカ系奴隷や先住民との交流によって「pandeiro」が変化し、「パンデイロ」として独自の音楽性を持つようになりました。「パンデイロ」はブラジルの様々な音楽に用いられるようになり、現在ではブラジルを代表する楽器の一つです。
4.音楽性
タンバリンとパンデイロはそれぞれ異なる地域で発展してきたことが分かりますが、その音楽性についても詳しく見てみましょう。
タンバリンはヨーロッパや中東で古くから使われてきた楽器ですが、その音楽性は多様です。タンバリンは教会音楽や民俗音楽だけでなく、クラシック音楽や吹奏楽、ポップスやロックなど様々なジャンルの音楽で使われています。タンバリンは手で叩いたり振ったりして演奏しますが、膝や尻などに打ち付けたりすることもあります。タンバリンはジングルの鳴る音が特徴的ですが、ヘッドを叩くことでドラムのような音も出せます。タンバリンはリズムを刻んだり、アクセントを付けたり、華やかさを加えたりする効果的な楽器です。
パンデイロはブラジルで生まれた楽器ですが、その音楽性は独特です。パンデイロはサンバやショーロ、ボサノヴァなどのブラジル音楽に欠かせない楽器です。パンデイロは手で叩いたり振ったりして演奏しますが、指先や親指、手首や肘などを使って様々な音を出します。
5.使われる分野
タンバリンとパンデイロは、それぞれ異なる文化や音楽の伝統に根ざしています。タンバリンは古代から宗教的な儀式や民族舞踊などで使われてきました。中世以降は西洋音楽に取り入れられ、オーケストラや合唱団などで演奏されました。現代ではポップスやロックなどのジャンルでもタンバリンが使われています。
パンデイロはアフリカから伝わった打楽器で、ブラジルでは国民的な楽器として親しまれています。カポエイラはもちろん、ブラジルではカーニバルやストリートパフォーマンスなどでパンデイロが欠かせません。また、ブラジル音楽の代表的なジャンルであるサンバやボサノヴァではパンデイロが主要なリズム楽器として使われています。現代ではジャズやワールドミュージックなどでもパンデイロが使われています。