どうもりゅうです。
カポエイラにはベンゲーラというビリンバウのトーキ、およびジョーゴのスタイルがあります。
全く同じトーキや同じスタイルのカポエイラですがそれを「バンゲーラ」と呼ぶ人もいます。
知らない人がみるとほとんど、もしくは全く同じものなのですが、なぜ2つの呼び方があるのでしょうか。
それはカポエイラの歴史に根本があります。
Beguela(Banguela)とは?
カポエイラのビリンバウのトーキの名であり、ジョーゴのスタイルです。
ベンゲーラのジョーゴは地面に手をつくことの多い低い姿勢のゆっくりめなジョーゴです。アンゴーラのジョーゴと異なり儀式的・礼節的な動きや個々人に依存する多種多様な表現は少なめです。
このベンゲーラというジョーゴはメストレビンバがつくりました。
ベンゲーラという言葉の由来は、アフリカのアンゴラの「ベンゲラ」という地名、またはそこに住む「ベンゲラ族」という民族に由来します。
1930~40年代にメストレビンバが活躍していましたが、メストレビンバはその他の多くの黒人系のブラジル人と同様に、読み書きができませんでした。当時はきちんと学校教育を受けられなかったからです。
文字として言葉を識別しなかった為、耳で聞いた音で言葉を覚えて話すことが全てでした。異国のアフリカの言葉である「ベンゲーラ」を、メストレビンバは「間違って」バンゲーラと口にしていました。
これらは一説ですが、当時を知る人もまだご存命のためかなり有力な説です。
メストレビンバが作ったカポエイラのスタイルで、そのビンバが「バンゲーラ」と呼んでいたのなら、それはもう元の言葉の意味云々よりもそれを優先して他の生徒たちも「バンゲーラ」と呼んでいました。
しかし当時にベンゲーラという言葉についてもともと知っている人からすれば、バンゲーラという言葉は間違いですし、その間違いを汲んでベンゲーラと言い直す人も当時多くいました。
つまり、メストレビンバの言い間違いと、その言い間違いを直さずずっと使い続けたことで、ベンゲーラ、バンゲーラ、どちらも同時に同じことを意味する言葉として使用されてきたのです。
後世にアバダカポエイラの創始者のメストレカミーザが、ほとんど忘れられたバンゲーラのスタイルを再構築して生徒に教えようとした際、「我々はこれをバンゲーラではなくベンゲーラと呼ぶ」と名前を指定し伝えたことで、今それはベンゲーラと呼ばれます。
また現在には、「20世紀前半メストレビンバの作ったスタイルがバンゲーラで、20世紀後半にメストレカミーザが再構築して以降行われているスタイルがベンゲーラで、2つは違うものだ」という人もいます。
ただそれを言い始めると、同じカポエイラやアンゴーラ、ヘジオナウという同じ名前でもグループや時代によって様々にスタイルも変容しているため、そんなことを区別する必要もあるのかと個人的には思います。
というようにメストレビンバの言い間違いから来たこのベンゲーラ・バンゲーラの言葉の違いには、今でもさまざまな意見や立場があります。
この解説もなるべく多くの側面から紹介していますが、またさらに違う意見もあると思います。
カポエイラの有名なCDにも
「Benguela ou Baguela」(ベンゲーラかバンゲーラどっち?)という歌があったりします。