生体力学的にみたカポエイラの動き

どうもりゅうです。
ブラジルのカポエイラに関する論文を読んでいて面白いものがあったので、解説し、感想と私なりの意見も述べたいと思います。

今回紹介するのはサンタカタリーナ大学のAdriana D’Agostini氏の「O JOGO DA CAPOEIRA NO CONTEXTO ANTROPOLÓGICO E BIOMECÂNICO」という論文です。

この論文は、カポエイラについて歴史や文化といった人類学的な観点と、ジョーゴの動きの重心制御、支持基底の操作、運動連鎖などの生体力学的観点の全く異なる両視点から分析し、そこに共通点や関係性を見出したというものです。
カポエイラについての論文は、歴史や哲学的なもの、社会性や文化的価値などについて述べられたものがほとんどです。
生体力学として分析したものを見たのは私は初めてで、そこがとても斬新で面白いと感じました。

もちろん本来カポエイラは明らかに運動としての要素が目立ち、十分に特徴的なはずですが、奴隷制、抑圧への抵抗や解放、音楽性やアフリカ系文化や宗教との関係など文化的に研究することが多すぎます。また排斥されてきた歴史から、文献や資料の少なさが原因で文化面に対する調査、研究が学問的にはほぼ全てとなっているのが現状です。

ですので力学的な観点での学術機関での研究というのが貴重で、本来もっと研究されても良いと感じました。

生体力学とカポエイラのジョーゴ

この論文で述べられていた生体力学観点から分析したカポエイラの動きを、要約してみます。

・姿勢と重心制御

カポエイラの基本姿勢のジンガは、低い重心と広い支持基底を特徴です。。ジンガは、重心を常に移動させることで安定性を確保し、同時に次の動作への即応性を高めています。重心制御は、攻防の切り替えを滑らかにする中核的要素です。

・支持基底と安定性

片脚支持や逆さまの姿勢が頻繁に用いられるカポエイラでは、支持基底の操作が安定性に直結します。手や頭部を支持点として用いることで、身体は多様な姿勢を可能にし、相手の攻撃に対する回避やフェイントを実現しています。

・力の伝達と運動連鎖

カポエイラの蹴りや回転動作は、局所的な筋力ではなく、全身の運動連鎖によって生み出されます。床反力を効率的に利用し、体幹を通じて末端へ力を伝えることで、過度な負荷を避けつつ有効な動作が可能となります。

・エネルギー効率と持続性

ゲームは長時間にわたって継続されることが多いため、エネルギー効率が重要です。無駄な緊張を避け、リズムに身体を委ねることで、疲労を最小限に抑えながら動き続けることができます。

・安全性とリスク管理

生体力学的に適切な動作は、怪我のリスクを低減します。関節角度の調整、衝撃の分散、視覚情報の活用は、安全なゲームの成立に寄与します。これは文化的規範と結びつき、過度な暴力を避ける倫理とも連動しています。


このように生体力学的に示された研究からは、カポエイラの動きが効率的に成り立っていることを示します。またリズム感やスムーズで綺麗な動きが力学的にも重要であることもあらためて示されています。

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